ピストイア Pistoia_1

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市庁舎 (Palazzo Comunare)
市庁舎 (Palazzo Comunare)

 ピストイア (Pistoia)は、トスカーナ州北部にある都市で、ピストイア県の県都。

 

【アクセス】

 ピストイア (Pistoia)は、フィレンツェの北西約80kmに位置する小さな町です。フィレンツェから国鉄を利用すると40分ほどで到着します。プラート (Prato)からは15分ほどです。

 

 鉄道の駅は街の南端にあるので、中心部に行くには、北に500mほど歩くことになります。バスもありますが、街の中心部には入って行かないため結局歩くことになります。

 

 城が南東にあり、城壁が街を囲んでいました。現在でも14世紀に建造された城壁を見ることができます。小さな街ですが数多くの聖堂が残っており、中世から豊かな街であったことが窺い知れます。 

 

パスキ銀行 (Monte dei Paschi di Siena)
パスキ銀行 (Monte dei Paschi di Siena)

 1530年にメディチ家がフィレンツエに戻った以降は、完全にトスカーナ公国の支配下に組み入れられています。

 

 街の中心部にはドゥオーモ広場があり、午前中は市が立っています。大聖堂の脇には高い鐘楼が建っています。奥には市庁舎 (Palazzo Comunare) が接して建っており、大聖堂の向かいには八角形の洗礼堂があります。その脇にはポデスタ館 (Palazzo del Podesta) が並び建ち、更にその脇にはシエナの名門、モンテ・デイ・パスキ銀行 (Monte dei Paschi di Siena) がある、という宗教界と俗界の建物がこの広場の四方を囲んでいます。

 

 

 

【その他の情報】

 時間をかけて訪れたいトスカーナの歴史豊かな町とのこと

 「JAPAN-ITALY Travel On-line」市長が語る我が町観光自慢ピストイア市長 レンツォ・ベルティ氏

 

 

317枚もの写真が掲載されています。

 「イタリアトスカーナ街路紀行2012」→「ピストイア Pistoia

 

1. Duomo ドゥオーモ (Cattedrale di San Zeno) サンゼノ大聖堂

 

 町の中央に位置し、前には広いドゥオーモ広場があり、全体を見渡すことができます。

 

 10世紀初めに建設されましたが、1108年に火災で焼失し12世紀に再建されています。

 

 

 正面には三層のアーチが左右対称に並ぶピサ・ロマネスク様式の建物で、白と緑の大理石で縞模様に装飾されています。

 

 

 開廊部の中央の扉口の上のティンパヌムにはテラコッタ製の聖母子像が見られます。

 

 

 左手の鐘楼 (Campanile) は高さ67mあり、下部の堅牢さとは異なり、上部はアーチがリズミカルな軽やかさを醸し出しています。

 

 

 聖堂内は三廊式で、アプシスには「キリストの変容」画が飾られています。

 

 中央主祭壇の右手には三面祭壇画と上には復活したキリストを含む、聖使徒のフレスコ画が見えます。

 

 

 中央主祭壇の右手には三面祭壇画と上には復活したキリストを含む、使徒のフレスコ画が見えます。

 

 左右に聖ゼノと洗礼者ヨハネが立ち、天蓋は華やかなバロック様式となっています。

 

 

 右手中ほどには大理石製の説教壇があります。

 

 

 左手にあるキリスト磔刑図の板絵は13世紀のマルコヴァルド (Coppo di Marcovaldo) 作で、キリストの周囲に「キリストの捕縛」、「キリストの鞭打ち」、「十字架降下」、「復活」などが描かれています。

 

Altare argenteo di San Jacopo
Altare argenteo di San Jacopo

 

 右手側廊にある「十字架または最後の審判」と呼ばれる礼拝堂 (Cappella detta del Crocifisso o del Giudizio) には1287年に制作が開始され、2世紀と言う長い期間をかけ、遂に1457年にブルネレスキ (Brunelleschi)が完成させた、サンジャコポの銀の祭壇 (Altare argenteo di San Jacopo)があります。

 

 三層構成になっており、最下段にはキリストの生涯が15面に彫られています。中層にはキリストと聖母子と聖使徒が、最上段には荘厳のキリストが天使に囲まれて坐し、左右の脇には大天使ガブリエルと聖母が見られます。

 

 それぞれの像の作成者と制作年は以下に詳細記載されています(Wikipedia)。

 https://it.wikipedia.org/wiki/Altare_argenteo_di_San_Jacopo

 伊語なのでGoogle翻訳でご覧ください。

 

 地下祭室にはキリストの磔刑像が飾られただけの簡素な祭壇があります。  

 

2. Battistero (Battistero di San Giovanni in Corte) サンジョバンニ洗礼堂

 

 大聖堂の対面にある八角形の洗礼堂は14世紀の建造で、ピサーノ (Andrea Pisano) 作です。

 

 

 

 白と緑の大理石の縞模様で全面が覆われた美しい造りです。

 

 

 洗礼堂の中央には全身潜水式の洗礼盤が置かれています。

 

 

 

 

 壁の一面の壁龕にある正面祭壇は金の柱で飾られ、キリストの磔刑を見上げる聖母と聖ヨハネが描かれています。

 

 

 洗礼者聖ヨハネの立像彫刻が置かれている他は、飾りも無く、外面の華やかさとは異なり、内壁は天井に向けて装飾は無く、煉瓦が見えています。

 

3. Chiesa di San Bartolomeo in Pantano 聖バルトロメオ聖堂

 

 ドゥオモから北東に向かう、リーパ・デル・サーレ通り (Via Ripa del Sale)を進むと、通りの名前がサン・バルトロメオ通り (Via San Bartolomeo)と変わります。サン・バルトロメオ広場 (Piazza San Bartolomeo)が見えたところで、右折するとすぐにあります。聖堂前の広場からは聖堂を正面から見ることができます。

 

 

 聖堂の正面には三か所の扉口があり、上には白と緑の大理石が交互に並ぶ半円形アーチが載っています。さらにその上に同じ造りのアーチが五個並び、アーチの基は、四本のコリント式の柱頭飾りのある柱が支えています。

 左右の端には丸窓が、その内側にはニ連式の菱形模様が彫られ、左右の均整がとれたみごとな造りをしています。

 

 

 正面扉口の上の楣石には左右に大天使に守られたキリストと聖12使徒の浮彫が見え、像の下には使徒の名前が彫られています。その上には人を襲うライオンが二頭、向かい合わせになっています。

 

 

 聖堂内は三廊式で、コリント式の柱頭飾りのある柱が並んでいます。

 

 主祭壇には磔刑のキリスト像が飾られています。

 

 

 

 アプシス上の半円蓋には天使に囲まれ、虹の上に座す、荘厳のキリストのフレスコ画を見ることができます。下半分は剥落していますが、上部には鮮やかな色彩が残っています。

 

 

 左手の中程にある説教壇は、グイド・ダ・コモ(Guido da Como)、1250年作の大理石で、柱はライオンと人(テラモン)によって支えられています。

 

 

 説教壇の囲いはキリストの生涯の浮彫で飾られています。

 

 

 また柱頭飾りを良く見ると、アーカンサスの中にロマネスク様式特有のライオンや怪奇な動物が彫られていますし、その他にも浮彫があります。

 

 

 側壁には、「受胎告知」、「降誕」、「神殿奉献」、「東方三王の礼拝」などキリストの生涯を示す浮彫や、

 

聖人が脇侍する聖母子のフレスコ画などを見ることができます。

 

 なお、授乳する聖母のフレスコ画を良く見ると、奉納者のものと思われる手が描かれているのが分かります。元は、大きな画面に描かれていたと思われます。

 

4. Chiesa e convento di San Domenico 聖ドメニコ聖堂

正面 (Wikipedia Commons より)
正面 (Wikipedia Commons より)

 

 ピストイア駅前のロータリーから北へ向かう9月20日通り (Via XX Settembre)を進み、トレヴィーゾ広場 (Largo Treviso)の東側を通ってムーラ・ウルバネ通り (Via delle Mura Urbane)を東へ進み、すぐのマジ通り (Via dei Magi)に左折します。一本目のコルソ・シルヴァーノ・フェディ (Corso Silvano Fedi)で右折するとすぐ右側にあります。

内部 (Wikipedia Commons より)
内部 (Wikipedia Commons より)

 

 ガリバルディ広場 (Piazza Garibaldi) に面した13世紀建設の大きな聖堂です。両側面に祭壇が並んでいます。

 

5. Chiesa di San Francesco 聖フランチェスコ聖堂

 

 街の西側にある同名の広場 (Piazza San Francesco d'Assisi)に面した大きな聖堂です。

 

 

 聖堂の正面は白と緑の大理石で縞模様に飾られていますが、側面には飾り大理石は葺かれていません。

 扉口は一か所で、上に丸窓があるだけの簡素なロマネスク様式の聖堂です。

 

 

 聖堂内は単廊式です。

 

 

 アプシスはステンドグラスで、主祭壇にはキリストの磔刑が置かれています。

 

 

 内陣の左右には、「傾く教会を支える聖フランチェスコ」、「聖痕を受ける聖フランチェスコ」、など、アッシジ (Assisi)の聖フランチェスコ聖堂に描かれているのと同様のフレスコ画を見ることができます。ただし、かなり風化が進んでいます。

 

【注】

 アッシジの聖フランチェスコ聖堂をご参照ください。

 

 

 右手奥の祭室にもフレスコ画が見えますが、通常は入室できません。

 

 

 左右壁には奥行きの無い祭壇が並び、「東方三王の礼拝」、「キリストの磔刑」など、フレスコ画も掲げられています。他の聖フランチェスコ聖堂とくらべると、絵画の数が多いように思われます。

 

6. Chiesa San Giovanni Fuorcivitas 聖ジョバンニ聖堂

 

 街の中央にある大聖堂から見て南に位置しており、名前の通り旧市壁の外にあった聖堂でした。現在ではお洒落な店が並ぶ、大通りのカミッロ・ベンソ・カブール通り (Via Camillo Benso Cavour) に面しています。

 

 三層式で白と緑色の縞模様の大きな聖堂は、現代建築として見ても新鮮で、周りの環境に溶け込んでいます。

 

 

 中層部にはアーチが規則正しく並び、最上部の一回り小さなアーチが建物を軽やかに、天に向けて上昇する印象を与える効果を生んでいます。

 横一列に並ぶアーチの内側の菱形の内の模様は一つ一つが異なり、柱頭飾りもア-カンサスだけではなく、中に人面や奇怪な動物があり、変化に富んでいます。

 

 細かな細工を見上げていると首が痛くなりますが、ロマネスク様式の聖堂を訪れる際の、試練の一つかもしれません。

 側面の飾りを良く見てから聖堂に入ることをお勧めします。なお、現在の扉口は大通りに面した側面の真ん中にあります。扉口の上の楣石には最後の晩餐の浮彫があります。

 

 キリストの懐にしな垂れかかる聖ヨハネとテーブルの前でキリストからパンを受けるユダの姿に注目です。

 

 ティンパヌムには中央に聖ヨハネが立ち、左手に人に襲い掛かるライオンが、右手には羊を襲うライオンの彫刻があります。

 

 聖堂内は単廊式です。

 

 

 アプシスにはステンドグラスが、主祭壇にはキリストの磔刑が飾られています。

 

 

 左手の側壁から飛び出した形の説教壇を支える柱の柱頭飾りには、アーカンサスの中に鳥が彫り込まれており、柱の元には羊を抑え込むライオンの彫刻があります。

 

 

 説教壇の囲みの中央には福音書記者聖ヨハネの表象の彫刻が聖書台を飾っています。

 

 

 説教壇の囲みは聖書を基にした説話からの詳細な浮彫が見られます。

 

 

 その他、聖母子と聖人を描いた多翼祭壇画や、

聖母子、ピエタ画が見られます。

 

 

 ロマネスク様式の聖堂独特の壁の厚さと窓の小ささから、採光は十分に取り入れられていません。

 

 そのために板絵にしても、作成当時の色彩が保たれてはいますが、昼間でも聖堂内は薄暗く、十分に鑑賞するのは困難です。

 

写真撮影にはフラッシュは使用できませんので、明るいレンズが必要です。

 

7. Chiesa dell'Immacolata Concezione 「無原罪の宿り」聖堂

 

 街の北にあるサンタマリア・カルミネ聖堂の脇を、更に北にアルメニ通り (via degli Armeni)を進むと城壁の手前の通り右側に見えてきます。

 

 聖堂の正面には柱廊がありますが、小さな聖堂です。

 

 

 聖堂内は単廊式に見えますが、両脇に懺悔室が備わっている三廊式の聖堂です。主祭壇も簡素な造りですが、奥にギャラリーがあります。

 

 

 左右に並ぶ懺悔室が眼を引きます。

 

8. Chiesa e convento di San Lorenzo 聖ロレンツオ聖堂

左手前:Santa Maria delle Grazie サンタマリア・グラツィエ聖堂      右手奥:San Lorenzo 聖ロレンツォ聖堂
左手前:Santa Maria delle Grazie サンタマリア・グラツィエ聖堂      右手奥:San Lorenzo 聖ロレンツォ聖堂

 

 街の中心からブオンファンティ (via Buonfanti) 通りを東北に向かうと、ロレンツオ広場 (Piazza San Lorenzo)  に出ます。

 

 広場の西側にはサンタマリア・デラ・グラツィエ聖堂 (写真左手前) があり緑の木々の奥に聖ロレンツォ聖堂が見えてきます。

 

 

 

 1278年ゴティック様式で建設され、アウグスト派の修道院を併設する大きな聖堂でしたが、ナポレオンの占領下で廃止されています。

 

 

 扉口の上のティンパヌムにはキリストの磔刑図の下に、修道院長聖アントニオが描かれているのを見ることができます。

 

9. Chiesa di San Paolo 聖パオロ聖堂

 

 街の中心から南東にある城 (Fortezza di San Barbara)に近いところにあります。

 

 歴史は古く、748年に建造された後、12世紀に再建され、14世紀に現在の形に改修されました。

 

 

 ロマネスク・ゴティック様式ですが、内部はバロック様式です。

 

 左手には鐘楼が聳え立ちます。

 

 

 正面中央の高い扉口の上のティンパヌムに、両脇に天使を従え、剣を持つ聖パオロの像が見られます。

 

 その上には薔薇窓があります。

 

 破風の下には柱廊があり、軽やかさを出しています。

 

内部 (Wikimedia Commonsより)
内部 (Wikimedia Commonsより)

 

 聖堂内は単廊式です。左右の壁に祭壇があります。

 

10. Chiesa di San Pier Maggiore 聖ピエール・マッジョーレ聖堂

 

 大聖堂の南側のトッレ通り (Via della Torre)を東に向かい、突き当たりのフィリッポ・パチニ通り (Via Filippo Pacini)で右折します。通りの名前がサン・ピエトロ通り (Via San Pietro)に変わり、その先の二股に分かれる手前の左側にあります。

 

 聖堂前に小さな広場があり、そこから聖堂の正面を見上げることができます。1086年の建設ですが、1124年に拡充され、1263年に改修されています。

 

 正面の構造は聖バルトロメオ聖堂、聖アンドレア聖堂に類似しており、3カ所の扉口と、その上に白と緑のアーチが並んでいます。扉口の脇柱は方形です。

 

 

 正面扉口上の楣石は中央のキリストが聖ピエトロに天国の鍵を渡し、その両脇に聖人が並ぶ浮彫となっています。その左下にはライオンの彫刻があります。

 

    右手はアーカンサスの柱頭飾りになっていますが、良く見るとその下の大理石にライオンの浮彫があり、左手のライオンの柱頭飾りの彫刻の下の大理石にはドラゴンの浮彫があります。

 

 

 中央アーチの下には羊を襲うライオンが持ち送り積み (Corbel) の形で突き出しており、その下には人面と奇怪な怪獣が彫られています。ロマネスク様式の特徴を良く表している聖堂です。

 

 

 なお、現在は学校として利用されており、聖堂としての機能を果たしていません。残念ながら、内部の参観は許可していません。

ロマネスク様式の聖堂の外観を楽しむことで、満足するしか有りません。

 

 

【注】

 聖バルトロメオ聖堂、聖アンドレア聖堂をご参照ください。