ブレシア Brescia
【アクセス】
ブレシアはミラノから電車で1時間ほどで着く、ロンバルディア州でミラノに次ぐ大きな街です。駅は街の南端にありますので、街の中心にあるロッジア広場(Piazza della Loggia)までは1km程です。
またこの広場から東端の聖ジュリア聖堂 (Santa Giulia)までも同程度の距離があります。駅前からバスの便も良いのですが、街の至る所に聖堂がありますので、徒歩でゆっくり見て廻ることをお勧めします。
北端の高台にある城からは街が一望できます。
車で訪れた場合も駅の脇にある駐車場を利用するなど、街に入る前に駐車してから散策することになります。
なお、駅前には新しくて親切なインフォーメイションがあり、街の地図や美術館での催し物などの情報を得ることができます。
【歴史】
ブレシアの歴史は古く、交通の要所として、紀元前3世紀の古代ローマ時代に既に都市が建設されていましたし、ローマ帝国時代には大いに繁栄していました。
中世時代は鉄鉱石を産したことから、武器製造が盛んになっています。なお、15世紀から18世紀に掛けてミラノとブレシアで製造された数多くの武具が城の中にある博物館で展示されています。従って、街には古代ローマの遺跡からローマ帝国時代の遺跡、ロマネスク様式からルネサンス様式、バロック様式に至る大小多くの聖堂や、宮殿が良く保存されており、美術品の集合体の様な街です。
街角の思わぬところに中世からの噴水がありますので、それらを見て廻るのも、面白い散策となるでしょう。
【街を歩く】
なお、街の中心にはロッジア広場の他に、パウロ6世広場(Piazza Paolo VI)、ヴィットリア広場(Piazza della Vittoria)という大きな広場が三つ隣接しています。それぞれの広場は多くの道に接続しています。
また、その道にも多くの細い道が交差していますので、道は非常に判りにくいと思います。
目的地に行くには、名前の分かる広い道を通って近くまで進み、そこからわき道に入って行くことをお勧めします。近道と思って細い道を進むと、行き止まりに遭ったりして、どこに居るのか判らなくなる恐れがあります。
以下、聖堂への行き方につきましては、やや詳しくご案内いたします。
【宿泊】
宿は、駅前や街中に多くありますので、中心地に近い宿を取ると観光には便利です。
1. Duomo Nuovo 新ドゥオーモ (Cathedrale di Santa Maria Assunta:サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂)
街の中心にある広場の一つである、パウロ6世広場(Piazza Paolo VI)にあります。
駅からは駅前のスタツィオーネ通り(Viale della Stazione)から東に進み、ラッタンツィオ・ガンバラ通り(Via Lattanzio Gambara)に入り、二つ目のT字路をアウレリーオ・サッフィ通り(Via A. Saffi)に左折して、突き当たりの交差点で右前方のアウレリーオ・サッフィ通り(Via A. Saffi)に入ります。アウレリーオ・サッフィ通りは、二本の道が並行して走りそれぞれが一方通行となっています。北上して、XXセッテンブレ通り(Via XX Settembre)、次のヴィットリオ・エマニュエレ二世通り(Via Vittorio Emanuele II)との交差点を過ぎ、通り名がアントニオグランシ通り(Via Antonio Gramsci)に変わります。さらに北上して二本の道が合流し、突き当たりのヴィットーリア広場(Piazza della Vittoria)に出たら、直ぐに東に向かうトリエステ通り(Via Trieste)に右折して進むと、左手にパウロ6世広場(Piazza Paolo VI)が見えてきます。
この広場は従来ドゥオーモ広場 (Piazza Duomo)と呼ばれ、広場の東側の南端に旧大聖堂があり、その北に接して大聖堂が建設されました。中世では宗教、政治の中心地となる広場でした。
なお、ブレシア出身のモンティーニ(Giovanni Battista Montini)が1963年に(在位1978年まで)、法王パウロ6世となったことを記念して広場の名称が変更されました。
1604年に建設が始まり、途中数次に渡る中止を経て、19世紀になって完成しました。正面は白いイオニア式の柱が二層になっており、屋根の上には、聖母被昇天の像の他、聖ペテロ、聖パウロ、聖ヤコブ、聖ヨハネの立像が見えます。
聖堂の大きなドームは1825年になって完成し、91mとイタリア有数の高さを誇っていました。なお、現在のドームは第二次世界大戦後に再建されたものです。
内部はギリシャ十字形で外観と同様にイオニア式の柱が並ぶ大きな聖堂です。
アプシスには聖母被昇天が描かれています。
側廊壁にはモレット(Moretto)の「イサクの生贄」(Sacrifice of Isaac)を始め、ロマニーノ(Girolamo Romanino)作の「聖母マリアの生涯」など、多くの画家の作品が見られます。
2. Duomo Vecchio 旧ドゥオーモ 旧大聖堂
街の中心にある、パウロ6世広場(Piazza Paolo VI)に新大聖堂 (Duomo Nuovo)と並んであります。通称ロトンダ (La Rotonda :円形の建物)と言われていますが、道を尋ねるときには新大聖堂を目指すのが早道でしょう。
新旧両大聖堂の前の広場は従来ドゥオーモ広場 (Piazza Duomo)と呼ばれ、中世では宗教、政治の中心地でした。ブレシア出身者(Giovanni Battista Montini)が1963年に(在位1978年まで)、法王パウロ6世となったことを記念して広場の名称が変更されました。
従来あった聖堂の上に、11世紀に建設されたロマネスク様式の聖堂ですが、建物が円形であると言う非常に珍しい形状をしています。
近郊ではマントヴァ(Mantova)に同じような円形の聖堂(San Lorenzo)があります。
聖堂内部には周歩廊が巡り、多くのフレスコ画が天井や穹霳を飾っています。
一段と低くなっている床面は聖フィラストリオ(San Filastrio)の地下聖堂と接続しており、その上に15世紀なって聖堂内陣と礼拝堂が造られました。
高い窓から、一条の光が暗い聖堂内に差し込む状況は、荘厳な雰囲気を醸し出しています。
モレット(Moretto)やロマニーノ(Gerolamo Romanino)やマッフェイ(Francesco Maffei)が制作した傑作があり、14世紀末の司教で、街を救ったベラルド(Berardo Maggi)の石棺が入口の近くに見られます。
3. Sant'Agata 聖アガタ聖堂
ヴィットリア広場(Piazza della Vittoria)の西の端から北に向かい、ロッジア広場(Piazza della Loggia)に出る手前のダンテ通り(Via Dante)の東端にあります。
入口は細い道に面しており、広場からも聖堂全体を見渡すこともできず、なかなか見つけにくい所にあります。
6世紀から7世紀に掛けて建設された、街でも古い聖堂の一つですが、15世紀にゴティック様式で再建され、その後16世紀、17世紀、18世紀と度々改修されてきました。
正面には薔薇窓もあり、側面にはゴティック様式が見えますが、入口はバロック様式で改修されています。クピドが飛ぶ上には聖アガタの立像が見られます。
聖堂内は単廊式で、入口から内陣に向かいますと、建物が中央からやや右に振れているように見えます。
内陣は階段により一段と高くなっており、アプシスには聖アガタの殉教図が掲げられ、その上には多くの天使に囲まれたキリストの磔刑図が描かれています。
コリント式の柱が支える非常に高い天井一面と、側壁の全てはフレスコ画で飾られています。
広くは無い聖堂の内部は、圧倒されるほどの多くの多色多彩な絵画とフレスコ画に包まれていますが、なぜか、荘厳の中にも華やかな、暖かな印象を感じさせる聖堂です。
4. San Giovanni Evangelista 福音書記者聖ジョヴァンニ聖堂
街の中心地のロッジア広場(Piazza della Loggia)からマメリ通り(Corso Mameli)を西に向かい3本先の細い道を北に曲がった所にあります。
道幅が狭く、かつ街の中心に近い所にあるので人通りも多く、曲がる道は見逃してしまいがちです。
すでにあったロマネスク様式の聖堂を15世紀に改装して建設されました。
レンガと白い石との縞模様が当初の趣を伝えていますが、薔薇窓は改装され、入口の柱廊も新しいもので、ティンパヌムには何も残っていません。
聖堂内は三廊式で、イオニア式で造られた白い列柱が清楚な凛とした趣を醸し出しています。
内陣正面にはキリストの聖顔が飾られるだけのシンプルな飾りです。
なお、側廊壁には聖遺物を収めた聖遺物容器の棚が見られ、一部フレスコ画も残っています。
5. San Francesco 聖フランチェスコ聖堂
駅からスタツィオーネ通り(Viale della Stazione)を北西に進みレップブリカ(Fontana di Piazza della Repubblica)のロータリーからコルソ・ジャコモ・マッテオッティ(Corso Giacomo Matteotti)を北上すると、フランチェスコ通り(Via S.Francesco D'Assisi)と交差し、その右側にあります。
街の中心のヴィットリア広場(Piazza Vittoria)からでは、ダンテ通り(Via Dante)を西に進みパーチェ(Via della Pace)通りを南下してフランチェスコ通り(Via S.Francesco D'Assisi)に出た角にあります。
1254年から1265年に掛けて、フランシスコ派により建設された、ロマネスク様式の聖堂です。
聖堂の前には広場がありますが、聖堂全体を見渡す程広くはありません。
正面には大きな薔薇窓が見えます。
内部は三廊式の大きな聖堂で、太い円柱が尖塔アーチを支え、内陣は14世紀に造られました。
16世紀にロマニノ(Romanino)が制作したフレスコ画の聖母子像の祭壇画の他、モレット(Moretto)や、ジョッティスト(Giottoesque)によるフレスコ画も見ることができます。
6. Santa Giulia 聖ジュリア聖堂
街の東端にあり、中心地のロッジア広場 (Piazza della Loggia)から博物館通り(Via Musei)を東に進み、左側に見えるローマ帝国時代のカピトリーノ神殿跡(Tempio Capitolino e Teatro Romano)を過ぎると左手に見えてきます。
長い建物の一番奥に入口がありますが、その少し手前に八角形のドームを載せた聖マリア・インソラリオ(Santa Maria in Solario)聖堂が見え、続いて聖サルヴァトーレ聖堂 (Basilica di San Salvatore)が並んでいます。
この聖堂は、聖ジュリア聖堂と聖サルヴァトーレ聖堂(San Salvatore)とその修道院と修道尼院、更に聖マリア・インソラリオ(Santa Maria in Solario)聖堂が一体となった混合建設で、現在はサンタジュリア市立博物館となっています。
もともと聖堂や修道院が整然と配置されていませんでしたし、それらを接続させて博物館にした構造になっていますので、広くて非常に複雑な構成になっています。
市立博物館としての展示品は先史時代から古代ローマの時代、ローマ帝国時代の彫刻やモザイクや、ロンバルド時代からカロリング時代と幅広く、質の高い多くの品が展示されています。
その上に、従来からの聖堂が組み込まれていますので、聖堂の壁面に残るフレスコ画や、壁面に掲示されていた聖画像も見ることができます。このような状況ですから、案内図を片手に見ていても、現在どの部分に居るのか分からなくなってしまいます。
聖サルヴァトーレ聖堂は三廊式で後期ロンバルディア様式の傑作と言われ、三箇所のアプシスを擁するバシリカ様式建築で、遠くビザンティウムから運ばれた柱も見られます。
隣接する聖サルヴァトーレ修道尼院は735年に時のデジデリオ(Desiderio)公爵の命で建設され、一部が巡礼者への宿坊とし提供されたほか、救貧院としても活躍していました。
更にその裏手には聖ジュリア聖堂が続いています。道路からは聖ジュリア聖堂の正面が見られます。
聖サルヴァトーレ修道院はベネディクト派修道院で、裏手に聖マリア・インソラリオ聖堂が隣接しています。
7. Santa Maria dei Miracoli サンタマリア・ミラコリ聖堂
駅から北西に進み、レップブリカ(P.Le Repubblica)交差路から北東に向かうリベルタ通り(Corso Martiri della Liberta)を進むと左手に白い聖堂が見えてきます。
聖ナザロ・エ・チェルソ聖堂が裏手に当たります。
1488年に建設が始まり、100年かかって15世紀末に完成しています。
方形の聖堂で、内装が完成したのは16世紀になってからで、ドームは18世紀に完成しました。
第二次世界大戦で聖堂は大破し、壁面の絵はほとんど破壊されてしまいましたが、正面は奇跡的に損壊をまぬがれました。
正面の柱廊は4本のコリント式の柱が並び、楣石には怪獣や野人の顔の浮彫が見られ、その上には植物模様の細かな浮彫が見えます。
内部の柱も同様に細かな浮彫で装飾されています。
8. Santa Maria della Pace サンタマリア・デラパーチェ聖堂
街の中心地のロッジア広場(Piazza della Loggia)からマメリ通り(Corso Mameli)を西に向かい、パラッタの塔(Torre della Pallata)が見えたらパーチェ通り(Via Pace)に左折すると右手に見えてきます。
広い道にありますので、比較的簡単に見つかります。ヴィットリア広場(Piazza Vittoria)からは、ダンテ通り(Via Dante)を西に進みパーチェ(Pace)通りに右折すると左側に見えてきます。
1630年のペスト禍終焉後、ブレシアの街の再建の動きと共に建設が始められましたが、スペイン継承戦争の勃発で遅延し、1720年になってようやく着工され、1746年に完成した新しい聖堂です。
聖堂を美しく豪華に建設することが求められ、当時最先端の建築様式であった、バロック様式が採用されています。ドームは1736年から建設が始められました。
正面下部の入り口部分は大理石ですが、上層部は煉瓦と石の混合材により、一見素朴な印象を与えています。
内部は単廊式の大きな聖堂で、コリント式の列柱が並ぶ豪華な造りとなっています。
アプシスには聖母子と3人のマギが飾られ、その上には聖母戴冠が描かれています。壁龕には聖人の立像が見られます。
9. Santi Nazaro e Celso 聖ナザロ・エ・チェルソ聖堂
駅から北西に進みレップブリカ(P.Le Repubblica)交差路から北に向かうマッテオッティ(Corso Matteotti)通りを進むと大きな白い聖堂が見えてきます。
15世紀に建設されましたが、18世紀に再建されました。
堂々たるイオニア式の柱が並び、見上げると中央にキリストが祝福のポーズで立ち、脇には聖人の立像が並んでいます。
聖堂内も外観と同じくイオニア式の柱が並ぶ明るく近代的な聖堂です。
入口から入った中央の柱の前の聖水盤は三頭のイルカが尾で貝を捧げ持つ、可愛らしい造りになっています。
正面内陣は多色の大理石で造られバロック様式で作成された聖像が並んでいます。
アプシスには1520年(一説に1522年)に若ティティアン (Young Titian)が、アヴェロルディ(Averoldi)のために制作した、傑出した5枚一組の祭壇画が飾られ、その中央には復活したキリストが描かれています。
その他、モレット(Moretto)やロマニノ(Romanino)が制作した絵画を見ることができます。
10. San Zeno Al Foro 聖ゼノ聖堂
街の中心地のロッジア広場(Piazza della Loggia)の北側から東に向かい、博物館通り(Via dei Musei)を進み、ローマ帝国時代のカピトリーノ神殿跡(Tempio Capitolino e Teatro Romano)が左に見えたら、道路右手にあります。
または、パウロ6世広場 (Piazza Paolo VI)からカルロ・カッタネオ通り(Via Carlo Cattaneo)を東に向かい、ラウラ・チェレート通り(Via Laura Cereto)に差し掛かった所で北に向かい、フォーロ広場(Piazza del Foro)を北上すると、博物館通り(Via dei Musei)に突き当たり、正面にカピトリーノ神殿跡が見えてきますが、その手前右手にあります。
小さな聖堂で、聖堂正面手前の門柱には子供の天使が球に乗り、その脇にはイルカ2頭がお互いに絡み合い逆立ちする飾りの、一風変わった囲いが見えます。
12世紀に建設されたと思われる聖堂の上に、18世紀にバロック様式で建設されました。入口を囲む片蓋柱が高さを強調しています。
聖堂の右側面にもローマ帝国時代の遺跡が見えます。
内部は単廊式の小さな聖堂で、新約聖書からの絵画が飾られています。
なお、ロマネスク様式の床の一部が見られます。