ポルデノーネ Pordenone
ポルデノーネ Pordenone
街の説明
ヴェネチアからウーディネ(Udine)に向かう鉄道を利用して1時間半ほどのところにある街です。
駅は街の西のはずれにありますが、駅前から街並みが広がっています。旧市街は街の東南に在り、歩いて散策できる距離にあります。
ローマ時代にノンチェッロ(Noncello)川の水運を利用した港が元となってできた古い街です。12世紀から13世紀にかけてのローマ教皇派と神聖ローマ帝国皇帝派との抗争時代には、神聖ローマ帝国のハプスブルグ家の支配下に入っており、オーストリアのザルツブルグ(Salzburg)大司教の影響下にありました。その後、13世紀末から14世紀初めにかけて、アクィレイア(Aquileia )の総主教の指揮下に入っています。
城を中心とした旧市街は14世紀になって河川を利用した貿易活動で繁栄しましたが、度重なる疫病で多大な損害を被っています。16世紀以降ヴェネチアの支配下に入り、経済的にも安定して発展してきています。
街の中心のエマニュエーレ2世通り(Corso Vittorio Emanuele II)には中世から18世紀に掛けて建設された優雅な家並みが続きますので、一軒ずつ見て歩くことをお勧めします。
イタリアの街では通りの一本一本に名前がついているので、地図さえあれば場所の確認が容易です。また、一軒一軒に屋敷番号が付いており、通りの左右で奇数と偶数が分かれていますので、屋敷を特定するのにも不便を感じません。しかもこの街では分かり易く表示されているので、旅行者には有り難いことです。
例えば、大聖堂に向かって右側(西)は、屋敷番号10=Casa Simone:13世紀。屋敷番号46=Casa Bassani :15世紀。屋敷番号52=Palazzo Mantica:16世紀。屋敷番号54=Palazzo Cattaneo:18世紀。屋敷番号56=Palazzo Montereale-Mantica:18世紀の建築、という具合です。
左側(東)には屋敷番号17=Casa Odezzili:14世紀。屋敷番号31=Palazzo Tinti:18世紀。屋敷番号39=Palazzo Torossi。 屋敷番号41=Palazzo Cattaneo。屋敷番号45=Casa Vianello:14世紀。屋敷番号47=Palazzo Gregorisなど、建設された時期に幅があるので、建築様式もそれぞれ異なりますが、フレスコ画の残る屋敷や彫刻で飾られた屋敷等が並んでいます。ただし、通りにはポルティコが続いていますので、通りの反対側の建屋を見ることになります。
1.Duomo 大聖堂 (San Marco) (サンマルコ)
駅前からマッツィーニ通り(Via Mazzini)を北上し、カヴール広場(Piazza Cavour)からエマニュエーレ2世通りに右折して、真っ直ぐ進むと突き当りに市庁舎が見えて来ます。その左側に市立美術館が在り、その奥にひときわ高い(79メーターあります)石の塊のような、大聖堂の鐘楼が独立して建っています。大聖堂はその奥に在ります。
14世紀半ばにゴティック様式で建設されましたが、16世紀、18世紀に改築されています。鐘楼も14世紀の建設です。
聖堂の正面は印象的な構成になっています。一か所の扉口の上に丸窓型の窪みがあり、切妻型に壁に線を入れ、その上にも一回り小さな円形の窪みがあることで、建物が二層になっているように見せています。両脇には二本ずつ半円柱の片蓋柱がありますが、建屋の中間までの高さしかなく、柱の上を結ぶ横柱により、挟んでいる壁龕を二分しています。
ティンパヌムにはキリストの半身が浮き彫りにされ、半円形の上に聖マルコが立ち、両脇に天使が立っています。
聖堂内は単廊式で、両脇に三箇所の礼拝堂が並んでいます。
中央主祭壇には、ポルデノーネ(Il Pordenone)の作で、聖マルコがアクィレイアのエルマゴラ(Ermagora)司教に聖別を与えており、助祭のフォルトゥーナ(Fortunato)のほかに聖セバスチャン、聖ジェロラモ、洗礼者聖ヨハネ、聖ジョルジョ等多くの聖人が描きこまれた絵が掲げられています。
右側壁の最初は聖母礼拝堂(Santa Maria Madre della Misericordia)で、同じくポルデノーネの「聖母子と聖クリストフォロ」が掲げられています。続く側壁には14世紀のフレスコ画の一部が残っています。三番目の礼拝堂にはフォゴリーノ(Marcello Fogolino)作の「聖フランチェスコと聖ダニエラと洗礼者聖ヨハネ」が掛けられています。次いで右袖廊の手前の礼拝堂(Montereale Montica)には祭壇画としてアマルテオ(Pomponio Amalteo)作「エジプト逃避」が飾られていますが、圧巻は側面から天井まで一面に聖母の生涯がフレスコ画で描かれていることです。
リッキエリ(Ricchieri)礼拝堂にはキリストと天使の像が置かれていますが、側壁のフレスコ画はファブリアーノ(Gentile da Fabriano)作です。
右手奥の聖具室にはキリストの復活のフレスコ画が描かれており、中央には洗礼者聖ヨハネの生涯を描いた板絵が16世紀に制作された洗礼盤の周囲を覆っています。
左側壁二番目の礼拝堂にはティントレット(Domenico Tintoretto)1594年作の聖ジェロラモ(San Girolamo)が飾られています。
右の柱にはポルデノーネ作の聖ロッコと聖エラスムス(San Rocco e Sant’Erasmo)のフレスコ画が見られます。
非常に多くの作品が見られ、華やかな聖堂です。なお、扉口の内側上にオルガンが在ります。
Santissima Trinita 聖三位一体聖堂
大聖堂の右手のサンマルコ通りを進み、サンティッシマ通り(Via della Santissima)と名前が変わって、ノンチェッロ川を渡ると正面に見えて来ます。グラツィエ通り(Viale dele Grazie)に面して、八角形の聖堂が在り、右手には八角形の鐘楼が接して建っています。
16世紀初旬の建設で、中央主祭壇にはキリスト、聖母などの板絵が置かれており、アプシスをはじめ周壁には旧約聖書と新約聖書からの「アダムとイヴ」、「ノアの方舟」や「イサクの生贄」などポルデノーネの弟子のカルデラリ(Giovanni Maria Zaffoni:通称=Calderari)1555年作のフレスコ画が見えます。
Santa Maria degli Angeli (Chiesa del Cristo) サンタマリア・デリ・アンジェリ聖堂
大聖堂からエマニュエーレ2世通りを商店街に沿って北上していくと、軒先から個人の家に入って行くような狭いサンロッコ通り(Via San Rocco)があります。この道から二股路地を左に進むと聖堂の正面広場に出ます。
この通路に気が付かずに行き過ぎても、しばらく行くと店の切れたところにクリスト通り(Via del Cristo)と言う狭い道があります。ここからも聖堂に向かうことができます。
ただし、どちらの道も店を見ながら歩いていると、気が付かずに通り過ぎてしまいます。
1309年の建設で、改築が繰り返され、新装なっています。
聖堂内は単廊式で、主祭壇のキリストの磔刑像の他、聖母や聖人像が置かれています。トルメッツォ(Gianfrancesco da Tormezzo)作の「聖バルバラ」のほか、降誕、エジプト逃避などのフレスコ画がところどころに残っている程度です。
San Francesco 聖フランチェスコ聖堂
大聖堂からエマニュエーレ2世通りを北上して、家屋番号47番のグレゴリウス邸(Palazzo Gregoris)の手前からメルカト通り(Via del Mercato)に左折し、モッタ通り(Via Motta)と名前を変えると、左手に聖堂が見えて来ます。その前の広場に聖フランチェスコが鳥と話をしている像が立っています。そのまま進むと聖堂の後陣が見えて来ます。鐘楼が見えますが、途中の高さで崩壊しています。
聖堂の正面は広場の手前から左に曲がるサンフランチェスコ通りに面しています。15世紀初期に建設されており、扉口と丸窓が一つある、ロマネスク・ゴティック様式の小さな聖堂です。
聖堂内にはツァッフォーニ(Giovanni Maria Zafoni)作の聖家族と聖フランチェスコのフレスコ画が有ります。
なお、18世紀まで聖堂としての役割を果たしてきましたが、現在では公共の施設として利用されています。